ウォールストリートジャーナル社説「4年で挫折した議会多数派の民主党」より。
出口調査では、回答者の48%――投票者全体の半数近く――がオバマ政権は医療保険制度改革を撤回すべきと答えた。その9割が共和党候補に投票している。また景気刺激策については、「経済を悪化させた」との回答が3割に上り、「景気に変化が見られなかった」との回答も3割に達した。さらに、政府の役割について、56%もの投票者が「企業や個人に任せたほうがよいことまで」政府が行っていると回答した一方で、政府介入の拡大を支持した回答は38%に過ぎなかった。
ウォールストリートジャーナルは保守寄りで民主党に手厳しいということを差し引いても、これらの数字は多くの日本人にとって意外だろう。ことに、医療保険制度改革を半数近くが拒絶している点は、多くの日本人にとって理解しがたいのではないか。
アメリカ人が連邦政府へ向ける視線は、日本人が「お上」に向けるそれとは大きく異なる。もちろん、アメリカだって公共事業はビッグビジネスだし、連邦政府があってこそ自分たちの生活が成り立っていることは理解している。だが同時に彼らは、一定の留保を忘れない。個人の武装をはじめ、自らや家族、そしてその財産を護る権利を決して「お上」に委ねたりはしない。政府もまた人の集まりであり、過ちも腐敗も当然起こりえるものと見なしている。いやむしろ、規模が大きい分だけ腐敗と非効率に傾きやすいと見なしている。それゆえに彼らは税金で傷病者を救済することを良しとせず、国が個人や法人の行為を掣肘することを忌み嫌う。同時に、彼らは善意と能力を持つ者による奉仕を尊ぶ。また、個人の力量による成功を尊ぶ。彼らは決して、傷病者の切り捨てを望んでいるのではない。ただ、人間の力は有限で、多くの者は他人まで救えないとの諦観を抱いている。
個人的には残念なことに、日本にはこういった価値観に根本を置く政党はない。そしてまた、そのような価値観を抱く国民も少ない。自称保守派の私としては今のところ、比較的近い方向性の党を支持していくしかないのだろう。ただいずれ、「お上」意識が大いに損なわれる時が来るのではないかと考えている。