良し悪しや好悪は別として、世界で最も普遍的な文化を持つ国はどこか?
それはおそらく、アメリカだろう。
そう考えた場合、アメリカを中心とした世界秩序が維持され続けることは人類にとって望ましいことだ。
一国を中心としない世界を理想とする方も多かろうし、その気持ちもわかる。
しかしながら、その理想のために対立・衝突を生じさせても良いとは考えにくい。
では、アメリカが世界を支配すればいいのか?
私はそう考えない。
アメリカ文化の普遍性は高いが、当然ながら完璧ではない。彼らは多様性を尊びつつも、原理主義的一面も持っている。
そして、文化を変質させるのは容易ではない。長い時間と密接な交流が必要だ。
そのためには、アメリカの文化を受け入れ、協調し、拡張していく者たちがアメリカの外部に必要とされよう。
アメリカは彼らを自らの実質的支配下におきつつ、彼らに依存し、徐々に自らも影響されていく。
そういった役割を、日本は受け入れるべきではないか。
正直なところ、今の状態がアメリカの「精一杯」であるのならば、パクス・アメリカーナはそれほど長くは続かないだろうというのが少なくとも今のところの感想です。
アメリカは、世界のどの戦略要地でも直接支配を行っておらず、恒久的で安定した後背地を本国以外のどこにも持ってはいません。言い換えれば、アメリカの戦略の策源となり得るのはアメリカ本国以外にはない、つまりアメリカの戦略は本国から「持ち出し」によって支払われているわけです。
しばしば言われているところですが、「世界帝国」の経営の根幹となる異民族外交及び異民族統治の上手さ、強さにおいては、かつてのローマ帝国やオスマン朝、そして大英帝国とは比較になりません。今現在のアメリカのやり方は、これら諸帝国よりも、むしろアッシリア帝国のそれに近いようにさえ見えます。
これがナショナリズムやモンロー主義とどう結びつくのかは不分明ですが、近代ナショナリズムが「世界帝国」をもはや不可能にしたという(楽観的な?悲観的な?)主張には反対です。前近代においてもナショナリズム的激情は常に通奏低音のように存在していたのだし、そして何より近代ナショナリズムに勝るとも劣らぬ威力を持つ宗教的ショーヴィニズムが一般的であったことを忘れてはなりません。そしてその威力は、まさに現在この地上で改めて証明されているところです。
アメリカが果たしてローマになるのかアッシリアになるのかは分かりませんが、歴史の教訓を学んだ上で言えるのは、我々としては彼らと親密かつ誠実に付き合いつつも、一定の距離を最後に置いておくことを忘れず、いつでも「尻をまくって逃げ出せる」準備をしておくのが恐らくベターであろうということではないかと考えます。
投稿情報: ばべる | 2004-07-13 17:17
イギリスの「世界支配」とアメリカのそれを相対的に比較するためには、この本がまず手頃かと。
浜鍋哲雄『英国紳士の植民地統治』中公新書
投稿情報: ばべる | 2004-07-13 17:21
>英国紳士の植民地統治
さっそくアマゾンでチェックすると…ユーズドで2000円。
うーん、評価が高いんですねえ。
一応いくつか本屋をチェックしましたが、やはり在庫なし。
同じ方の本を読むべきですかね。
投稿情報: Hi-Low-Mix | 2004-07-13 20:25
絶版だったのすっかり忘れてました(w
しかし中公新書なので、公共図書館には常備されているかと。
ICS(インド高等文官)は近年かなり盛んな研究分野なのですが、書籍として簡明にまとめられた概説は多くないですね。
後は、おっしゃる通り浜鍋先生の別の本を含めて、この視座からインド統治を扱っているのは、
・浜鍋哲雄『世界最強の商社』日本経済評論社
・本田毅彦『インド植民地官僚』講談社選書メチエ
くらいでしょうか。
しかしまずは『英国紳士の植民地統治』をお薦めします。
某タネ本の1冊だし(w
投稿情報: ばべる | 2004-07-13 21:29