CNN.co.jpの「米兵とイラク人女性が挙式」という記事より。
マンスールさんの家族は、イラクの人口2400万人の内わずか3%にしか満たないクルド系キリスト教徒。イラクのキリスト教徒はフセイン政権下で迫害されたのはもちろんのこと、フセイン政権崩壊後も、他のイスラム教グループから標的にされており、キリスト教会が連続爆弾テロに遭っている。
外務大臣や副首相を歴任したタリク・アジズはクリスチャンだったと記憶しているが。
クリスチャンが迫害された、という記述は不適切ではないか。
問題がさりげなく宗教対立に収斂されそうなのが恐ろしい。
強権的ないし全体主義的統治下で押さえ込まれていた民族(種族)対立や宗教対立が、それが崩壊するや一気に噴出爆発するという事例はしばしば見受けられます。
オスマン朝末期のアルメニア人虐殺
オスマン朝崩壊後のギリシアとトルコの「民族交換」
イギリス撤収後のインド・パキスタン戦争
ティトー体制崩壊後のユーゴ内戦
ソ連崩壊後のチェコとスロヴァキアの分離
スハルト体制崩壊後の東ティモール戦争
個人の力の弱い、前近代的な家族・氏族的社会を圧政から「解放」して「民主化」するのは、きわめて繊細で賢明な制御が必要とされる危険な作業です。
与えられた「1票」は、民族対立や宗教対立を扇動することで独裁権力を獲得しようとする者に非常に容易に与えられがちです。
なので、現在のイラクが直面している宗教対立や民族対立の危険については、どういう形であれ警告の度を越すということはないように思われます。
投稿情報: ばべる | 2004-08-24 13:32
おっしゃるとおりです。
たしかに、そのような事態に陥らぬよう警告を続けることは重要でしょう。
ただ、今回の報道については「善意で無力なクリスチャン」と「野蛮で暴力を厭わぬムスリム」というステレオタイプを補強する材料となりかねないと危惧しました。
昨今の混乱の中での対立が、かつてから継続的におこなわれていたかのように書かれていたように感じ、懸念を表明したしだいです。
投稿情報: Hi-Low-Mix | 2004-08-24 19:41