世に「悲運の名機」という言葉がある。天の運、時の運が味方せず、ついに活躍できぬままに生涯を終えた航空機を表して用いられる。だがたいてい、運がなかったというよりは単に状況認識が甘かったり、実力が不足していただけというケースが多い。
だが、日本陸軍のキ96についてはそう表現しても良いだろう。
キ96は当初キ45改(屠龍)の改良型として計画され、迎撃戦闘機としてのブラッシュアップが進められた。主翼にはキ66試作急降下爆撃機のそれが転用され、不十分な開発リソースを有効に活用した。5式戦を名機にしたてた発動機ハ112-IIを両翼に備え、37mm×1、20mm×2と重爆撃機迎撃に適した火力を有していた。
にもかかわらず、陸軍はそれを試作に止め、複座襲撃機(キ102)開発へと方針を変更した。ところがそのわずか2ヶ月後、今度はキ102に高々度戦闘機型を設けるよう新たな方針変更がなされた。終戦間際にはこれをベースとしたキ108高々度戦闘機までが試作されている。そして、それらのいずれも実戦には間に合わなかった。
もし思いつきのような方針変更がなく、迎撃戦闘機としての開発・生産が続けられていたなら、大戦末期の迎撃戦において史実以上の善戦が期待できたはずだ(無論、戦局を左右することはなかったろうが)。一刻も早い実戦力化を目指した主務者土井武夫技師の努力は、ついに実を結ばなかった。
これを「悲運の名機」と呼ばずしてどうすべきか。あいもかわらず似たような過程でデスマーチを強いられている人々を見ていると、そのように慨嘆せざるを得ない。
てなことを妄想していると「てめーの腹こそ慨嘆しろや」との電波からのツッコミ。今週は外食などでずいぶんさぼっちゃったからなー。まずは基本プログラムをビリーバンド付きで実施。むむ、腹筋がちょっと苦しいよママン!
>キ96
P-38よりはF7Fに性格が近い機体ですねえ。
要求が二転三転したのが実際の開発スケジュールにどれくらいの影響を与えたのかについては無知ですが、とりあえず迎撃機型を完成させていれば、マージンが大きいのだから他の用途にも比較的簡単に転用できたはず、と考えるのはしょせん後知恵。
過給器代わりに高高度用の酸素瓶を載せていたのは過激ですが、ロケット機よりは安全。
>5式戦を名機にしたてた発動機ハ112-II
一方、海軍の天雷は誉を積んだ。
次はチハですか。
投稿情報: ばべる | 2007-05-12 20:28