「非人道的兵器」という言葉がある。しかしそれが意味するところについては人によってずいぶん異なるようだ。一度、ここで自分の考えをまとめたい。
例えば爆弾。多くの人を殺害でき、様々な思いの込められた市街を瞬く間に破壊する。これは非人道的兵器だろうか?
私はそうは思わない。人の命を奪う。人々から手足をもぎ取り、目や耳を永久に奪い取り、その生涯にわたり糞尿を垂れ流さざるをえないほどの苦痛を与える。爆弾は、それらの残虐を為し得る。だが、それをもって非人道的兵器とすべきだろうか。
答えは否、だ。それらの痛ましき事態を引き起こせるのは、なにも爆弾に限らない。拳銃であれナイフであれ、むごたらしく人体を破壊し、死に至らしめ得る。場合によっては拳ですら同様に人を害し得る。
いくらなんでも、拳やナイフまで「非人道的兵器」と定義すべきではない。であれば、それらとの間で破壊力の大小以外の差のない存在を「非人道的兵器」とは呼べない。
では、なにを「非人道的兵器」と呼べるだろうか。
私の考えでは、核兵器は一切の例外なく「非人道的兵器」だ。しかし、その破壊力のゆえではない。核兵器は次世代を、生をまだ授けられていない者たちをも害する。彼らにはなんら罪はない(原罪という考え方に私は同意できない)。それらを害すること以上に「非人道的」な行為があろうか。
枯れ葉剤などの化学兵器も同様だ。ただし、化学兵器のすべてが遺伝的被害を与えるか否かについては知識不足ゆえ判断できない。よって、化学兵器のすべてを「非人道的」と考えるべきかは保留する。
なお「非人道的兵器」だから絶対に保有してはならない、使用してはならないとは必ずしも考えない。世界から富を収奪することによって得られた繁栄のおこぼれで腹を満たしている自分が、そのような偽善を抱くべきではないからだ。
国際法に基づく戦争のルール、つまりハーグ陸戦協定によれば、非人道兵器とはその23条により「不必要の苦痛を与うべき兵器、投射物その他の物質」と定義づけられています。
つまり兵器とは敵の無力化という目的から外れないように設計運用されなければならないと謳われているのですが、しかし逆に「必要な苦痛」ならば与えて構わないとも読めます。
残虐な苦痛を与える兵器は敵の戦意を阻喪させるだろうという計算に従えば、全ての苦痛が「必要な苦痛」に分類できるわけで、こうして23条の規定は簡単に骨抜きになります。
実際問題として、現在では「必要な苦痛」のみを与える非致死兵器が使われていたりします。
結局、「不必要な苦痛」を定義できるのは国内及び国際世論の一致のみということになりますが、事が安全保障という国家主権と国家生存の要にかかわえるだけに、対人地雷の事例非正規軍を含めたルールの策定と全世界的な遵守はきわめて困難だと考えます。
戦争の惨禍が戦争でない状況にまで拡散することを阻止しようとする最近のオタワ条約(対人地雷禁止条約)の事例が精一杯のところですが、これにしても米中露も各地の非正規軍も批准していないのですから、実効性は大いに疑問です。
投稿情報: ばべる | 2006-10-19 17:32