架空戦記(仮想戦記)ではよくでてくるメカの一つに、ジェット化された震電がある。
震電は先尾翼式のレシプロ機で、その未来的なデザインは実に魅力的だ。だが、空冷星形エンジンを機体後部にとりつけているので、実用化されれば冷却関係のトラブルに悩まされたことだろう。そんな訳で「もしも震電がジェット化されれば…」は多くの人が考えるドリームとなった。
私も幾度も夢想したが、どうも今ひとつ収まらない。
多くの架空戦記では、実機でのエンジン冷却用エアインテークをそのままジェットのエアインテークに利用している。だがその位置では、ジェットエンジンは先尾翼によって生じる乱流を吸気することにならないだろうか。
初期のジェットエンジンは乱流に弱く、どの設計者も「いかにストレートに空気をエンジンに送り込むか」腐心している。それを考えると、インテークの前に尾翼を置くのはひどくリスキーだ。
また、機関砲発射時のガスをもろに吸い込みそうなのも心配だ。史実でも、いくつかの戦闘機が試作→量産の段階でこの問題への対処を強いられている。
という訳でエアインテークを先尾翼、機関砲のガスから影響を受けない位置に移動させるとなると
- 機首にエアインテークを設け、長いダクトで機体後端のエンジンに吸気を導く
- 機首にエアインテークを設け、コクピットも機体前部に移し、おまけにエンジンも機体中部に移す
- 機体からエンジンを排除し、Me262よろしく左右主翼下にエンジンをポッド状に取り付ける
という手が考えられる。
だが1は、いかにも吸気効率が悪そうだ。ダクトをストレートに保とうとすれば、胴体は無駄に太くなるだろう。成り立たないことはないが、なんとも不格好だし、機体重量もかさむだろう。
2になると、これはもう新造と同じだ。重心位置が大きく変わるから主翼の位置も変わり、おそらく先尾翼はやめてふつうの配置になるだろう。どうひいき目に見ても、震電のかけらも残るまい。
3は割と現実的に思えるが、先尾翼の影響を完全に排除できるかはよくわからない。また、機体後端の処理がいかにも難しそうだ。ぽってりとした尻からやたら高い垂直尾翼を立てることになるのではないか。なお、エンジンをポッド式に配置すれば摩擦抵抗は確実に増える。メンテナンス面では便利なので、初期のジェット機としてはメリットもあるのだが。でもまあ、ポッド式ならキ96系の機体と組み合わせるほうが楽そうな気がする。
とまあそんな訳で、どの手を使ってもあまりグッとこない出来になりそうである。
一部誤変換があったため、修正。ご指摘感謝。