SdKfz184はドイツの駆逐戦車。<フェルディナンド>や<エレファント>、<ティーガー>(P)駆逐戦車とも呼ばれる。
<フェルディナンド>の名、そして(P)の記号は設計に携わったフェルディナンド・ポルシェ博士に由来する。彼は若き日に電気自動車の設計で名をあげている。そのためか、電気駆動を戦車に持ち込むことにこだわっていた。
エンジンで発電し、その電気でモーターを駆動する。重く複雑な変速機を省略できる。なるほどたしかに利点はある。しかし、その代わりに発電機やモーター、電路が必要となる。それらと変速機を比較した場合、どちらに利があるか。ハイブリッド車の市販が20世紀末だったことを考えれば、さすがに第二次大戦中に電気駆動を選ぶのは不適切だったろう。
まして、当時ドイツにとって発電機やモーターに必要な銅は極めて貴重だったことを考えればなおさらだ。
だが彼は<ティーガー>を電気駆動式として設計し、ろくな実用試験もせぬままに生産を進めていた。さすがに、5両が完成した段階で生産は停止されている。代わりに、ヘンシェル社設計のモデルが<ティーガー>として量産された。
だがどういう訳か、ヒトラーは<ティーガー>(P)をベースとした重突撃砲の開発を指示した。特異な電気駆動は、戦車から重突撃砲への設計変更において幸いしただろう。パワーユニットを車体後部から中央に移しても、電路の短縮だけですむからだ。機械駆動式なら、動力を伝達するシャフトの変更などで手間がかかったに違いない。
車体後部に大型で分厚い装甲の固定戦闘室を設け、そこに71口径8.8cm砲が据えられた。対戦車戦においては無敵と言えるそれに与えられた名が、<フェルディナンド>だった。
だがその初陣は成功とは言いがたかった。たしかに多くの敵を撃破したものの、信頼性の不足や、機銃の不備から、チープキルの憂き目にあうケースが多かったのだ。
<フェルディナンド>は機銃の追加などの改良を経て<エレファント>と改名された。後にほぼ同じ砲を搭載する<ヤクト・パンター>が生産されているが、それまでのつなぎとしては一定の役割を果たしたと言えるかもしれない。
だが、そもそも<ティーガー>(P)の開発・生産は正しかったのか? そこから重突撃砲へと発展させるよりも、主力戦車の量産に注力すべきではなかったのか?
後世の我々から見れば疑問だが、歴史の最中にいたポルシェ博士なりヒトラーなりには「そうせざるをえない」部分もあったのかもしれない。まこと、歴史は難しい。
まー、こっちのトレーニングにはさしたる選択肢もないから是非を云々することもないわな、と思いつつ最終プログラム(ビリーバンド使用)。トレーニングそのものが「無駄」とか「寄り道」ってケースがないわけじゃない。むしろ、ダメリーマン街道まっしぐらだからそんなトレーニングをしているとも言えちゃうわけで。ポルシェ博士もこんな不安をかかえながらやっていたのかな、と妄想。
機関銃の不備でやられたというのはまったくの伝説で、それどころかクルスクで直接の交戦の結果として失われたフェルディナントの数は片手で数えるほどでしかありません。
喪失の主たる原因は地雷、故障、広い機関室上面に榴弾を食らったことによる機械系ないし電気系の破損。つまり簡単に言えば、それらのちょっとした損傷を迅速に修理するのに必要なスペア部品が、現場に絶対的に不足していたことです。
上を勘定に入れても、フェルディナント部隊はクルスクでは交換率1対20に近い大戦果を挙げており、何より卵を扱うように操縦しなければならない脆弱なトランスミッションを抱えているティーガー戦車に比べて、遥かに操縦しやすい点が現場では非常に好評だったと伝えられています。
大量の銅資源を食らうのはその通りですが、潜水艦の量産に投じられた量に比べればずっと少ないでしょう(これは厳密な数字の検証が必要ですが)。
個人的には、フェルディナントは総じてバランスの取れた、状況に適応した良い兵器だったと考えます。
以上、フェルディナント弁護論でした。
投稿情報: ばべる | 2007-10-03 16:54
おっしゃるとおり、<フェルディナンド>の生産には少なからぬ価値があったと思います。
この駄文を書くにあたり「クルスク戦に間に合うよう71口径8.8cm砲搭載のAFVを前線に送るには、たしかに<フェルディナンド>しかなかったろう」とは感じました。
とはいえ、後に<ヤクト・パンター>がはるかに多く生産されたことを考えると、やはり<エレファント>にはなんらかの「無理」があったのではないかと思われます。
重駆逐戦車と主力戦車の間でまったく互換性がないという状況が嫌われたのかもしれませんね。
投稿情報: Hi-Low-Mix | 2007-10-03 19:59
>後に<ヤクト・パンター>がはるかに多く生産されたことを考えると、やはり<エレファント>にはなんらかの「無理」があったのではないかと思われます。
フェルディナントはコンペに敗れて余った試作車のシャーシを流用した急造兵器ですから、たとえ増産しようとしてももうシャーシを造っているラインがどこにもないですよ。
また、ヤクトパンターも言われているほどの万能兵器ではなく、ティーガー系と同じく過重量が災いして相当に運用に気をつかうわがままな車輌だったと言われています。
まあ量産コスト等の数字をきちんと持ってこないと、これ以上の話は空論でしかないわけですが…
投稿情報: ばべる | 2007-10-03 20:45