ツマンスキー(ソユーズ)R-195はロシアのターボジェットエンジン。重量や出力から見ると、A-6E<イントルーダー>に搭載されたプラット・アンド・ホイットニーJ52-P8Aと似たクラスのエンジンのようだ。
R-195はこれまでのところ、スホーイSu-25<フロッグフット>のみが搭載しているらしい。Su-25は亜音速の対地攻撃機で、アメリカのA-10に近い性格を有する。だがA-10のエンジンはターボファンのゼネラル・エレクトリックTF34-GE-100。出力重量比でもR-195とは大きく異なる。
こうして見ると、はたしてSu-25を「A-10に近い性格」と言ってしまっていいのか疑問が生じる。ひょっとすると開発初期段階では、むしろA-6系に似た線を目指していたのかもしれない。いや、そもそも対地攻撃機においてはIl-2という名機を生み出したソ連だ。独自のドクトリン、設計思想に基づいてSu-25を開発したと考えたほうが良いかもしれない。だが米軍機をよく見知る我らは、どうしてもそれに引き寄せて(あるいは比較して)見てしまうきらいがあるのだろう。
不用意に既知の存在と対比するのは危険だな、などと思いつつ今日は最終プログラム(ビリーバンド使用)。世間じゃポスト「ビリー」の話題もちらほらあるようだが、イメージだけで比較するのはやめてほしいね。
>独自のドクトリン、設計思想に基づいてSu-25を開発したと考えたほうが良いかもしれない
それはまったくその通りなのですが、Su-25に限って言えば、アメリカのA-X計画に刺激され、コンペに負けたA-9の技術資料を入手して開発された機体だと言われているので、そもそもの設計思想は同じです。
発動機については、TF-34のような優れたターボファン発動機を、ソ連の技術力では実用化できなかったという事情があります。
ただし単純な出力の比較では、R-195(MiG-21の古い型のR-13からA/Bを取っ払ったもの)を積むSu-25は、TF-34のA-10を上回っています(9000Kg対8200kg)。
二つの機体の最大の相違は大きさと重さで、戦闘機並みのサイズのA-10が自重の2割近くを防弾装備に当てているのに対し、Su-25はどちからと言えば機動力と速力と重視した設計になっています。
しかし、A-10には劣りはしますがSu-25の防弾性能も実にたいしたもので、対空砲火で致命傷を与えるのは困難であることが実戦から分かっています。
Su-25が軽防御なのではなく、A-10が過激に重防御だというのが公平な見方だと考えます。
ついでながらA-6は、A-4やA-7と比べた場合はもちろん、F/A-18と比べた場合でさえ「重攻撃機」に分類される機体で、その得意とする任務はぶ厚い防空網をかいぐぐっての遠距離侵攻で、近接航空支援専従のA-10やSu-25とは基本的に違った種類の航空機です。
投稿情報: ばべる | 2007-10-27 09:52
書き落としましたが、A-10のような無茶な設計は、航空優勢の確保に揺るぎない自信を持てる米空軍だからこそ可能なもので、そうでないソ連の開発陣がよりオーソドックスな解答を選んだのは仕方ないことでしょう。
投稿情報: ばべる | 2007-10-27 10:13
またアサヒっちゃったようで申し訳ありません。
それにしても、そこまで特異な位置づけにあるA-10はどこからどう着想されたんでしょうね。他の西欧諸国は小型ジェット攻撃機を選択していましたし。
投稿情報: Hi-Low-Mix | 2007-10-28 17:38
>そこまで特異な位置づけにあるA-10はどこからどう着想されたんでしょうね
ヴェトナム戦争です。
1960年代後半、近接航空支援任務についた高価で大型の戦闘機(F-105等)が対空砲火によって予想外の大損害を受けていた戦訓から、ひたすら頑丈で単純で(全天候能力さえない)安価な攻撃機が求められたのです。
投稿情報: ばべる | 2007-10-28 19:31