米テキサス州のフォートフッド陸軍基地で5日発生した銃乱射事件で、警察は同日夜、陸軍少佐のニダル・マリク・ハサン容疑者(39)が住んでいた同基地近くのアパートを家宅捜索した。同容疑者はヨルダン系米国人で、事件当日の朝、アラブの伝統衣装姿でコンビニエンスストアに立ち寄っていたことなども判明した。
(中略)
ハサン容疑者はバージニア工科大を卒業し、97年に陸軍に入隊した。連邦当局者によると、家族はヨルダン出身だが、同容疑者自身はバージニア州生まれで、これまで国外へ派遣されたことはない。同基地に配置される前は首都ワシントンの軍病院に勤務し、精神科医として心的外傷後ストレス障害(PTSD)などを抱える兵士らの治療を担当してきた。同容疑者の患者の1人は、「本気で心配してくれる先生だった」と話す一方、「イラクやアフガニスタンからの帰還兵から恐ろしい話ばかりを聞くことが、大きな負担になっていたのだろうか」と語った。
[From CNN.co.jp:基地乱射事件、容疑者は軍少佐 アパートを家宅捜索]
- バージニア・テックと言えばかなりの名門。その卒業生がこのような惨事を引き起こしてしまったことは残念であり、興味深くもある。
- ヨルダン系であることで、911以降さまざまなストレスを受けていたであろうことは容易に想像できる。その彼が帰還兵の治療を続けた結果、「ミイラ取りがミイラになる」ことも十分にありえる話だろう。
- 彼の行動によって、アメリカにおいて中東系やイスラームに向けられる視線はより厳しくなるに違いない。不幸な話だ。
- これまでのところ、彼の信仰について報道されていないと思われるが、それはイスラームでないがゆえなのか、あるいはイスラームであるがゆえに、報道の影響を恐れて自粛しているのか。
・車のバンパーに"Allāh is Love"というシールを貼っていた(そしてある時嫌がらせでそれを剥がされ、車も壊された)。
・事件の前日、隣人に新品のコーランを譲った。
という報道を見る限り、ムスリムであることには間違いないようです。
患者への共感が度を越して「引き込まれてしまった」のか、それとも隊内の宗教・人種差別が原因なのかはもちろん分かり魔せんが、差別が日常的に行われていたのはどうやら事実のようです。
少佐が発砲しながら「アラー・アクバル」と叫んでいたという情報は今のところ何の裏づけもない伝聞の類いに過ぎませんが、もしこれが事実だとするならば、合衆国と軍で拠り所を失ってしまった人間の追い詰められた叫びなのかも知れません。
ブッシュ政権は一時期、ムスリムの軍人をことさら持ち上げることで、合衆国はテロリストの敵であってイスラム世界の敵ではないといくことをしきりにアピールしようとしていましたが、今回の事件はそんなものは紙より薄い演出に過ぎなかったことを改めてあからさまにしたのでしょうか。
投稿情報: ばべる | 2009-11-07 23:07
アメリカは多民族国家であるとはいえ、西欧文化・キリスト教がメインストリームだという事実は厳然としてある訳で。
そのなか、テレビに映し出されるニューヨークやロサンゼルスのような非宗教的空間というのは、むしろ例外なんでしょうね。
融和がなされることを期待しますが、その手段は想像もできません。
投稿情報: Hi-Low-Mix | 2009-11-08 06:58
ご存知やも知れませんが、合衆国の国章の鷲の頭上には、13個の星がなにやら濛々と輝くものに包まれているでしょう。
星はもちろん建国13州を表しているものですが、濛々としたものは「出エジプト記」でヘブライ人を導いた神の燃える雲なのです。
国章は4次にわたる会議の末、長い時間をかけてようやく決まったものですが、この雲はジェファーソンが作った第1次会議の時の案の名残で、それは出エジプト記の情景そのものを写したものでした。
合衆国は今も昔も、ピューリタンとその子孫の国なのです。WASPと言うのは、つまりパワーエリートたるピューリタンの名門たちのことです。国章がこの図像であり続ける限り、その事実は変わることはないでしょう。
投稿情報: ばべる | 2009-11-09 00:30