うちの会社は基本的に「工場」である。
全メンバーの半数はオペレータという名前の女工さんだ。
彼女らのほとんどは派遣社員で、会社について考えてもらうのは難しい。
しかし、彼女らの磨かれたスキルこそが生産力の基礎である。
残るメンバーの内、高役職者のほとんどは親会社などからの出向者である。
彼らの忠誠が会社ではなく、出向元に向けられているのは認めざるを得ない現実だ。
彼らの出向元は世界的に名を知られた会社ばかりであり、自らの会社の流儀を強く信奉している。
彼らは数年で出向元に帰任する。
いきおい、彼らは問題を先送りしたり責任を他者に転嫁したりしがちである。
プロパーとして雇用されているものの半数は中途採用である。
彼らへの統一的な教育はほとんどなく、スキルも方向性もばらばらだ。
しかし、彼らこそが会社という戦場の下士官であり、会社の背骨である。
残る半数はまだ初々しい若者たちであって、現時点ではこれからに期待するのみだ。
おそらくはこれらの状況に起因しているのであろうが、社内では部署間の対立が絶えない。
まったく異なる教育を受けた者たちが、それぞれ別のものに忠誠をつくしたままに旗を振るのだ。対立が生じない訳がない。
さすがに会社も気付いてはいるのだろう、やたらとコミュニケーションの場を設けたがる。やれなんとか委員会、やれかんとかタスクフォース。しかしそこでは建前ばかりが並べ立てられ、誰もが相手の言葉を眉に唾して聞いている。
このような現状をどう打破するか? 私の考えはこうだ。
まず、中途採用者らのうちからキーパーソン数名を見つけ出す。人望があり、オペレータらへの影響力を持つ者たちが望ましい。
次に、キーパーソンら一人一人に社内blogを作成してもらう。
彼らには、なるべくインフォーマルな話題を中心に記述してもらう。そして手を替え品を替え、オペレータらがそれらのblogを見るように促す。
この段階で、コメントやトラックバックというコミュニケーションスタイルをメンバーらになじませる。
ここで「トラックバックをするために自分(自部署)もblogを持ちたい」と言い出してくればしめたものだ。
おそらく、コミュニケーションの量と質は格段に改善されるだろう。
そして、キーパーソンへのネゴシエーションの後にフォーマルな話題をふる。
コミュニケーションをとることが常態となっているメンバーたちは、これについても議論の輪に加わるだろう。
そしてようやく、会社について腹を割って話し合う状況が確立する。
問題は、人望のない私にキーパーソンをくどけるかどうかだ。