ある若人に、そして自らに向けて。
人であれ組織であれ、能力の差や機能の差というものは存在する。
そしてそれらの中には、決して埋められない差も存在する。物理的に不可能であったり、時間と共に差が増すばかりと色々だが、人の力ではどうにもできないことだったりする。
では、劣るものはどうなるのか。滅びるのか。優れたものに服従するしかないのか。なるほどたしかに、そうなることもある。しかし決してそれだけでないことを、歴史は示している。
優れたものとて全知全能ではない。優れているが故に守るべき事柄が増えたり、自らの長所を活かしたいがために為さねばならぬことが増えたりもする。そして弱者にも、そこを突くチャンスは掴み得る。
チャンスを掴むには為すべきことが四つある。
優れたものに臆せず、その弱みを見つけ出すこと。
自らに何ができ、何ができないかを知ること。
優れたものが対応できず、かつ自らにできる何かを選り抜き、研ぎ澄ますこと。
そして何より、いかなる苦境においてもチャンスを掴む意志を持ち続けること。
いずれも決してたやすくはない。私自身、厄年に至ってもこれらを為しているとはとても言えない。
だが、諦めないで欲しい。長き人の世は常に、諦めなかった者たちによって切り開かれたのだから。