1/3にTBSが放送した番組「新春超歴史ミステリー古代ローマ1000年史!!空前の巨大帝国全解明スペシャル」を見た。塩野女史の受け売りばっかりというのは予想どおりだったが、映像面ではけっこう立派な作りで感心。これまでディスカバリーチャンネルとかで見たことのない絵だったが、いずれ制作協力にTBSの名前が入った状態で、テーマごとにまとめた番組として放送されるんだろうなあ。
全体を見ていてひどく気になったのは、ひどく皮相的な形での現代日本との比較。格差社会だの富裕層による既得権益確保だのと並べ立て、共和制ローマを否定して、カエサルや帝政を肯定する。まあ元ネタたる塩野女史がカエサル萌えだからしょうがないとも言える。しかし、女史はまがりなりにも、当時の情報通信インフラが今日と大きく異なることを指摘し、その前提の上で三頭政治や帝政を肯定していたはずだ。
だが番組ではそういったことに全く触れず、力強いリーダーによる仁政への期待ばかりを語っていた。
また番組の締めでは、今日と古代ローマを比較して「どちらが幸せだったか」などと問いかけていた。ローマ市民権を持たぬ人はほとんど描写せぬままにそんなことを語られてもなあ。
現代を否定し、想像上の「すばらしい過去」を称揚し、力強いリーダーによる変革を期待するってあーた、どこのワイマール共和国ですか。まだ1世紀もたってない過去の教訓をすっきり忘れてそんな妄言を垂れ流すって、どんだけ衆愚ですか。
この流れの果てを自分が見ることになりそうだと思うと、新年そうそううんざりする。